大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和30年(ラ)332号 決定

抗告理由は、本件建物はもと櫛原修の所有に属していたが、相手方において抵当権実行による競売手続において競落したので原審裁判所において競落不動産引渡命令を受け(同庁昭和三十年(ラ)第六号競落不動産引渡命令申請事件)、右競落不動産引渡命令正本にもとずき執行吏三浦繁雄にその執行を委任した。よつて同執行吏は昭和三十年四月八日現場に臨み本件建物の一部、即ち、同建物の内二階六畳、三畳半の二室、及び階段並に二階に通ずる通路に当る裏口勝手場と階下六畳室の各一部につき引渡の執行をなし、同建物の残部の引渡執行期日を同年四月十五日と指定告知した。而して抗告人はかねて本件建物(但地階の部分を除く)を櫛原修から賃借していたので右引渡執行に対し第三者異議の訴を右裁判所に提起し(同庁昭和三十年(ワ)第七号事件)、審理の結果敗訴の判決を受け、これに対し東京高等裁判所に控訴をなし、同時に右引渡執行の停止命令を受けた。しかるに元来一棟の建物を目的とする引渡執行においてその建物の一部だけにつき引渡執行をなすことは許されない。殊に本件建物の内上記執行部分はそれだけでは到底独立して使用することができない状態にあるからこの部分につき右引渡執行終了の観念を容れる余地はなく、右引渡執行は当然無効に帰すべきであるから原審裁判所に執行吏三浦繁雄が昭和三十年四月八日なした右引渡執行を許さない旨の裁判を求めたが棄却されたから原決定を取消し更に相当の裁判を求めるというのである。

しかしながら建物一棟全部の引渡を内容とする引渡命令正本にもとずき建物の一部につきなされた引渡執行も当然無効と解すべきではなく、右の部分が他の部分と区分して使用されうる状況にある以上この部分に対する引渡執行も有効と解すべきである。而して本件建物の内引渡執行を受けた抗告人主張の部分につき独立使用が許されない状況にあることは抗告人提出の書証によつては容易に認め難く、却て抗告人主張のように右執行部分が本件建物の内二階及び階段通路に当る事実に徴すればその部分の独立使用も可能であることが窺いえられる。従て本件建物の内右の部分につき執行吏三浦繁雄のなした引渡執行手続には違法の点はないものと認められる。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!